教育、学び、そして学校 〜 注67

公開: 2024年3月31日

更新: 2024年8月4日

注67. 力の不均衡を利用する「いじめ」の定義と日本の「いじめ」

{いじめ」の定義を比較すると、一般的には、加害者と被害者との間の「力の不均衡」を積極的に利用することが上げられています。すなわち、被害者も加害者も一人の場合、それを「いじめ」とは呼ばず、「ケンカ」とします。「力の不均衡」には、複数の加害者が集団で、一人の被害者を非難したり、傷つけたりすることを言います。これは、ノルウェーの研究者が、最初に提案した定義に含まれていたものです。

これに対して、現在、日本社会で言われている「いじめ」には、この「加害者と被害者との間の不均衡な力」を積極的に利用するとする考え方は含まれていません。日本で使われている「いじめ」の定義は、文部科学省が「いじめ防止対策法」に採用している定義です。さらに、文部科学省の定義では、「いじめ」の加害者が、被害者に与えた傷の重大さを重視しています。このことが、「いじめ」行為をあいまいにしたとの批判もあります。

最近、日本社会では、「スクール・カースト」と言う言葉が使われる例があります。スクール・カーストの上位にある人は、社会的な優位性を認められ、下位の者に対して優位な立場で行動できます。日本社会の教育現場における「いじめ」では、このカーストの概念を適用した加害者(達)の被害者に対する行為が、本人たちの間では、被害者を傷つける行為と認識されても、教員にとっては、客観的には「悪ふざけ」に見えたりします。

参考になる資料

三津村正和、学校における「いじめ」問題の現状と課題創価大学教育学論集第67号(2016)